おばあちゃんごめんなさい
ここで筆を置かないのも私の悪癖ですが、〝くそまじめ〟な私がひとつだけ祖母の教えを破ったことを言わせてください。
「憲明、加工賃をいただく染め屋は手堅い商売や。それを忘れ、自分らで生地を仕入れて染めて、売ったりしたら絶対あかん(それを業界は〝手張り〟と呼ぶ)。加工賃もらうんが一番ええんや。そやのに皆、ちょっと儲かったら調子にのって手張りし、在庫抱えて会社を潰すんや。和明がなにを言ってもあんたが止めるんやで」皆さんご存知のとおり、私は祖母の教えを守らず、パゴンという〝手張り〟をしようとする兄を止めませんでした。おばあちゃん、ごめんなさい。おそらく今頃、天国で冷や汗をかいているんでしょうね。