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【亀之物語】 第二章 -憲明回想- その五「あほ満開」

あほ満開


これまでのあらゆる経験(失敗をふくむ)、あらゆる出会い(わけのわからん人物をふくむ)、
ご縁、ご先祖、すべてを動員しての「パゴン」誕生でした。メンバーは当時社長の兄が四十八歳、経理の古田が五十七歳、企画の楢崎が五十三歳、工場にいた六名の職人も五十五歳前後、配色の府録だけ二十三歳と若かったのですが、常務の私も
四十五歳でしたから「おっさん&おばさんで勝てることをしよう!!」を合言葉にしていました。但し世の中に〝もの〟は溢れており「ものはつくらず、お客さんをつくろう!!」と考え、京友禅や和柄がもつ〝ストーリー〟を売ることにしました。また、楢崎は勤めていた以前の会社で洋服を扱っており、自身でパターンを引きつつ縫製してくれる会社を見つけてきました。デザイン学校を卒業したてだった配色の府録も現場で勉強し直し、大人の女性から好まれる「Pagong Color 」の土台を完成させてくれました。そんなとき宇宙人(兄)は再び、わけのわからん怪しい人物を連れてきます。ところが驚くことに、その怪人は「パゴンを全国の百貨店で売ろう」と言い、かつ実際に売る道筋をつくってくれたのです。そうしてパゴンがなんとかなり始め、生地プリントの下請け仕事もやめることになったのですが、
その方向転換に際し、今回は人員削減せずに済み、胸を撫で下ろしたことを今も覚えています。しかし安堵できたのは瞬時のこと。「わしは〝あほ満開〟や」と自称する兄は、かつて夜々パトロールしていた祇園への出店を決め、次いで「これからは三条や」と言って三条店を出し、ある夏前に「工場でお化け屋敷をやる」と宣言します。自称〝くそまじめ〟な私の反対意見は聞き入れてもらえず、工場はお化け屋敷と化し、困り果てていたらマスコミが大挙取材に来てくれ、先の怪人が目論んだとおり、パゴンは全国に広がっていきました。ほんま、商売はわかりませんね。