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有楽斎好み
有楽斎好み

春は桜餅、夏は涼しげなわらび餅。秋は栗餅。冬はいちご大福と春夏秋冬を感じることのできる和菓子は日本が世界に誇る文化の一つです。
古くは宮内の行事にちなんだご馳走であったが現代では、季節の移り変わりを告げる存在となり、街中で和菓子を見かけることができます。季節が過ぎるとすっと身を引く和菓子は、その季節にしか出会うことはできず、潔い性格のようです。

今回ご縁があり京都の老舗和菓子屋『橘屋』と『Pagong』がコラボレーションし、和菓子の名を用いたテキスタイルを制作しました。

京都、六条堀川に戦後から営まれている和菓子屋「橘屋」の3代目店主 辻本氏がお店の和菓子や材料名の書体を手掛け、Pagongがデザインを構成しました。
橘屋は戦後すぐに辻本氏の祖父が開業され戦後ということもあり、お砂糖は大変高価で入手困難な時代でした。こんな時代だからこそ、甘くて美味しいものを皆んなに食べさせたいという気持ちから和菓子を作り始めました。
一度食べたらまた食べたくなるどこか優しい味のする「橘屋」の和菓子は、地元だけではなく遠方や海外から足を運ぶ人もいる人気店です。一番人気の和菓子には当時、六条堀川にあった幻の井戸「佐女牛井」と名付けられたどら焼きがあります。
「佐女牛井」は一つ一つ手焼きする昔ながらの手法で作られています。銅板で同じ大きさ、同じ焼き加減で焼くのは熟練の技が必要です。「橘屋」では保存料や添加物を一切使用していません。餡も自然な甘さと小豆の風味を最大限に活かせれるように、甘みは氷砂糖のみを使用し、機械などに任せず時間をかけて丁寧に炊き上げておられます。
京都は盆地で山に囲まれ豊富な地下水と共に1000年の歴史を歩んできました。
「御水」は京菓 子、豆腐、湯葉、酒作りなどにかがせない資源となっています。京の名水として平安時代より知られていた「佐女牛井」は源氏の六条堀川邸にあったと言われています。
織田信長の弟、茶人の織田有楽斎がを大変気に入り源氏六条堀川邸の屋敷内に自らの名前が彫刻された井戸をつくり、 日々お茶を嗜んでいました。
多くの名だたる茶人に好まれ「佐女牛井」は天下一の名水として有名になりました。
その後も井戸は大切に守られ修繕されてきましたが、昭和二十年戦争後、堀川通の拡張のため周囲の民家の強制疎開で井戸は撤去された今では有楽斎がこよなく愛した幻の井戸として偲ばれ、どら焼きにその名が残っています。

機械によるものつくりが主流になりつつある中で、和菓子屋と染め屋が昔から大切にしている物作りに対する思いを込めて作った柄です。

和菓子屋「橘屋」
〒600-8333 京都府京都市下京区油小路通六条上る卜味金仏町185