梅の原産地は中国です。奈良時代前に日本に伝わり、貴族達の間で競って屋敷に植えられたと言われています。桜にとって変わられるまでは「花」と言えば「梅」を指し、万葉集には梅の花の歌が多く詠うたわれています。
梅は厳冬の中、百花に先駆けて咲き、芳香(ほうこう)を放つ事から忍耐力があり、生命力の象徴と考えられめでたい花とされています。
また、梅の花は学問が栄える時に見事に咲くという言い伝えがあり、天神信仰との関わりから中世には庶民の間でも親しまれた花です。
松竹梅はおめでたい組み合わせの代名詞のように現在でも使われていますが、松と竹は冬でも緑を保ち、梅は寒さの中、可憐な花を咲かせる事から、古代中国では「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」と呼ばれていることから始まっています。
平安時代の貴族、菅原道真もこよなく梅を愛しておりました。謂(いわれ)のない罪に問われ太宰府に流される時に「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」と詠みました。その梅があるじを慕って一夜にして京都から太宰府に飛んできたという”飛び梅”伝説も有名です。
道真の墓所(ぼしょ)に立てられたのが太宰府天満宮であり、没後京の都では次々と災いが起こり、道真の祟(たたり)だと恐れられ、そこで怨霊の怒りを鎮(しずめ)るため、創祀(そうし)されたのが北野天満宮です。
現在は天満宮に祀(まつられ)た道真は学問の神として信仰され、受験シーズンになると多くの人が合格祈願に訪れます。
その信仰が一般庶民の間にも広く浸透したのは、江戸初期に寺子屋が隆盛してからのことです。 この「天神さん」の紋も梅で「梅鉢紋(うめばちもん)」といいます。
梅の開花をかわきりにいよいよ待ち遠しかった春がやってきます。心ウキウキする梅の柄です。