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道長取りに辻が花
道長取りに辻が花

「道長取り」とは、指でちぎった和紙を斜めに配したような画面構成のことです。その名の通り、平安時代の藤原道長が好んだことから名づけられたといわれています。
「辻が花」という言葉の由来は諸説ありますが、現在 辻が花と呼ばれるのは、室町時代末期から桃山時代に流行した、絞り染めを基調に描き絵や摺箔、刺繍などを部分的に加えて様々な絵模様を表す文様染のことです。
辻が花の基本となる絞り染めは、奈良時代から伝統的に続く手法です。布を結んだり括ったりして染めた初歩的で簡略なものから、絵模様の輪郭を縫い絞って多色に染め分けたものまで様々あります。
また、描き絵とは直接生地に絵を描く手法です。
絞り染めの中でも縫い絞った糸の圧力で染料が生地に入るのを防ぎ、染色する技法を纐纈(こうけち)と呼びますが、辻が花の場合は輪郭を纐纈で染め、墨で描き絵を施しているのが特徴的です。
この柄の中には吉祥文様も描かれています。
円を四方に連ねた七宝繋ぎ、半円が鱗状につながる青海波、正六角形を並べた亀の甲羅のような亀甲文。いずれも切れ間なく連続する幾何学模様で、永続性や永遠性を意味します。
身近に咲く四季の草花が道長取りに配置されたこの柄は、「辻が花」を絞り染めではなく、型友禅の技法で表現しました。

春の桜、初夏の藤、秋の七草の桔梗、晩秋の菊、早春の椿…描かれた花々から日本の四季の豊かさを感じさせ、さらに七宝繋ぎや青海波、亀甲文を描くことで終わることのない四季の移ろいを寿ぐ柄となっています。