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百合と露芝
百合と露芝

日本は百合の国と言われるほど、万葉の時代から野山に自生していました。その球根(鱗茎)は百合根とよばれ、地下茎の一種で多肉になった鱗状の変形した葉を多数,重なるようにつけているものです。
百合根を食すると一片ひとひら離れます。この鱗片状の葉が多数(百)集まり、合わさった形になっている事から「百合」という名がついたといわれます。また、花が風にユラユラと揺れるさまから「ユリ」と言われるという別説もあります。
百合は、早くから鑑賞の対象とされて来ましたが、意外にも文様としては少なく、桃山時代の能装束に写実的な百合の柄が見られるくらいです。
明治末期、洋花の流行と共に写生風の図柄が現れ始め、大正期以降には着物の文様としても見かけるようになります。華やかで、どこか西洋風な風情が好まれたようで意匠化せずに写実風に表現する傾向がありますがこの百合はシルエットで百合の風情が美しく描かれています。
朝の陽ざしと共に消えゆく露のはかなさを日本人の繊細な美意識はないがしろにしませんでした。
眉のような三日月形に描いた芝草を幾重にも重ね、所々に丸い露の玉をあしらった抽象的な文様を露芝と言います。
秋草に露が宿る光景は日本的な情緒を含んだ文様です。

美人を表す言葉に「歩く姿は百合の花」と例えられたように、凛としたその花姿は人々の心をとらえて離さなかったのでしょう。広い野原にかすみがかかり、芝草が生い茂る中に百合が風に揺れながら楚々として咲いている幻想的なイメージのする美しい柄です。
身につけることで極上の上品さと美しさを与えてくれる百合と露芝の柄です。