この柄は大正時代から昭和にかけての、男の子の着物でした。
古代中国では虎は竹林に棲(すみ)、竹林の王と呼ばれていました。日本では四神の一つで西を守る「白虎」(びゃっこ)として古墳時代に墳墓(ふんぼ)や鏡に描かれているのを目にされた方は多いと思います。
明治時代に友禅の図案を多く描いていた岸竹堂(きしちくどう)は虎の図柄が得意でした。この図案は岸竹堂(きしちくどう)の絵ではありませんが、虎もしっかりと描かれており、当時の図案家の素晴らしい力量がうかがわれます。
大正時代には冒険が盛んになり、北朝鮮にアムール虎を探しに行くという冒険もあったようです。またこの図柄は竹と虎だけのシンプルな図案になっており、それがモダンさを感じさせてくれます。
座ってこちらを睨んでいる虎はお父さん虎、その後ろでお母さん虎の背中に噛みついているいたずらっ子の虎。
まるでそんな虎の一家に見えませんか?当時は家族中心、子供を大切にする時代でもあったのです。そんな風潮がこの柄の中にも垣間見る事ができるのも興味深いところです。
竹やぶの勇猛な虎のように強く逞(たくま)しく、健康に育って欲しい、竹のように真直ぐ育って欲しいという親の思いが込められている柄です。