色々な縁起の良い宝物を並べた福徳を招く吉祥文様です。中国の吉祥文様に由来し、それが室町時代から和風化して着物柄としても多く用いられた文様です。
そのひとつひとつにはそれぞれにいわれがあります。
が、この柄は江戸時代、将軍家や大名家の上級武家女性が正装時に用いる夏の衣裳の「腰巻き(こしまき)」に見られる柄です。帷子小袖(かたびらこそで)の上に細帯(ほそおび)を締め、その帯の結び目のところに着せかける「腰巻き」と呼ばれる衣服(打ち掛け)の柄です。焦茶色(こげちゃいろ)の地色に細かい宝尽たからづくしの模様を刺繍で縫い上げた豪華な衣裳で冬の盛装の打ち掛けに相当します。
その柄が後に小紋の染着尺(そめきじゃく)として用いられるようになったのです。
宝のひとつ一つのいわれを記載しますので参考までに、ごらんください。
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金嚢:お金を入れる財布としてだけではなく、お守りや香料などを入れる袋。
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隠笠:被れば姿を消して身を守ることができる。
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分銅:物の重さを量るとき使う重り。金銀で作って非常時に備えた。
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経巻:貴重な経典や秘伝を書いた巻物。
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宝鍵:財宝を守る鍵、蔵を開ける鍵。
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丁字:希少価値の高い香料で、薬としても使われた。