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四季花
四季花

日本には四季があり、そのおりおりに様々な花が咲きほこり、私たちの目を楽しませてくれます。花は、季節の変化を教えてくれる存在であり、その芽吹きから花開き散っていくまでの姿を人々は余すことなく愛でて来ました。

また民族学では、花は、ただ美しいだけのものではなかったと考えられています。
花が爛漫に咲くということは、土地の精霊がその年の豊作を先触れとして花の形で見せることでもあったからです。そこでは花は神にとっての依り代であり、神様を招く人間の側からは招代と呼ばれ、天上界と地上界の接点、つまりその「中心」のシンボルと考えられたのです。
花の開花に豊かな未来への約束を見た古来日本人にとって、花の美しい姿は、目を楽しませてくれるものである以上に、幸福な未来へのこの上ない喜びをくれる存在であったに違いありません。

着物の柄として描かれたこの柄では、季節を限定せずに様々な種類の花が描かれています。春の桜、牡丹、夏の菖蒲、紫陽花、秋の菊に、冬の梅…着物ではお馴染の花模様が取り揃えて描かれており、ここで表現されているのは、それぞれのモチーフが持つ季節感、というよりは、自然の持つ生命力そのものではないか、と思われます。

もちろん、描かれる花はそれぞれに吉祥の意味を持っています。
牡丹は百花の王と呼ばれ富貴の象徴ですし、菖蒲は勝負とかけた吉祥文、紫陽花も元は藍色の花が集まって咲くという意味をもっており藍が愛に通じることから寵愛への願いがこめられていると考えられています。菊は長寿を意味し、梅は菅原道真公の伝説から学問の神様と同等に扱われたりもしました。

四季花文様は、その華やかさと美しさで人の心を魅了します。また描かれる花がもつ吉祥の意味に加え、そこに表される自然のエネルギーで身につける私たちに日々を生きる活力を与え、豊かな未来へ導いてくれるようでもあります。