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扇面と松

扇面と松

扇面と松

このような吉祥文様(きっしょうもんよう)尽くしの柄は、子供の着物、女性の羽織裏などによく使われていた柄です。吉祥とは喜ばしい兆し、めでたい現れ、幸せという意味で、そういう喜びを形で表したものが吉祥文様と呼ばれています。人々はそれらを日常生活の中で大切にし、暮らしていたのです。自然との調和を図り、社会生活の中で人々との関わりのルールとしてまた、儀礼の時に使われる「かたち」として吉祥は大切に考えられていました。

まず、扇です。扇は末が広がっている形状から「末広がり」と呼ばれ、縁起の良い模様として古くから使われてきました。全開、半開き、閉じた形と色々な形状の面白さからも、また他の器物や草花と取り合わせて用い、王朝風物を思わす優美さからも古くから愛好されてきた図柄です。

松は千年の寿命があり、厳寒の冬でも葉の色が変わらない事から「常磐木(ときわぎ)」とも呼ばれ縁起のよい木とされています。
松の中にも、生命力旺盛に縦に伸びた形の若松文(わかまつもん)、ゆったりと山形に小枝を重ねた老松文(おいまつもん)、束ねた針のような松葉文(まつばもん)、長く引く根が延命を寿ぐ根引き松文(ねびきまつもん)、潮風に耐え地を這う磯馴松文(そなれのまつもん)など、各々に意味を持たせて形を描き分けているのです。
老松文は本来は松の木全体を描いた図柄をいいます。樹齢を経た幹の太さや枝振りの美しさを愛でて、格調高い意匠として用いられてきました。その代表的な例が能舞台の正面鏡板(かがみいた)に描かれた老松の図柄です。(これは神を称える奉納芸に始まる能が、古くは神社の影向松(ようごうのまつ 神の依り代)の木の下で演じられた事に由来します。武家の武楽となって能舞台が整えられると鏡板に松が描かれるようになりました。)
大名好みの狩野派様式で描かれた老松の図柄は江戸時代の大名の道具やそれを手本として作られた高級な調度、衣裳の文様に多く使われてきました。そして次第に幹の部分から離れた独特の山形をした枝葉の部分の形が単独で老松文として使われるようになったのです。
現在も老松を始め様々な松文様が婚礼衣装の打ち掛けや帯などに、常世(とこよ)の蓬莱世界(ほうらいせかい)を象徴するめでたい植物文様としてよく使われております。

 

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