鶴の群れが大きく羽を広げ大空を飛翔するこの柄は本阿弥光悦・俵屋宗達の「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」を基に、尊敬する先人の影響を受けて昭和の図案家が描いたものです。
「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」は俵屋宗達が金銀泥で大海原を渡る鶴の群れを描き、その上に本阿弥光悦が三十六歌仙の和歌を散らし書きした13m余の巻物です。宗達の下絵には一貫したドラマがあります。州浜に降り立つ鶴の群れが、はるか遠い空を目指して大きく羽を広げ飛び立ち、大海原を越え、低空を行くかと思えば突如一斉に大空高く羽ばたき、やがて対岸にたどり着き羽を休める。群鶴が金銀泥のシルエットでリズミカルに描かれています。おおらかで、豊かで、そして新鮮さを感じます。寛永の三筆のひとりと数えられた光悦の書もまた下絵に負けないおおらかさです。2人の合作である「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」は江戸時代初期の上層町衆であった光悦・宗達の美意識がふんだんに織り込まれた作品です。
その作品に触発されたこの図案は、羽を広げて優美に飛翔する鶴の群れをシルエットで描き、大空に向けて飛び立つ姿をリズミカルに表現しています。鶴は立ち姿も飛翔する姿も美しく古くより着物や器物に意匠化されてきました。「鶴は千年、亀は万年」と言われるように長寿の象徴とされた瑞鳥です。飛翔する鶴は凡人より高く抜きん出た人格をあらわしています。また鶴の声は天まで届くと言われ、名君・賢人の名声は広く世間に知れ渡るともいわれます。名君の世は天下泰平で、皆が幸せに暮らします。いつの世もこうありたいと願う、おおらかに舞う鶴の柄です。
群れ飛ぶ鶴に祈りを込めて身にまとえば、あなたの願いが叶うかもしれません。