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雪中雄鶏図
雪中雄鶏図

伊藤 若冲(1716年~1800年)は、江戸時代中期の京都にて活躍した絵師です。
錦小路にあった青物問屋「桝屋」の長男として生まれ、23歳で家督を継ぎ、四代目 伊藤源左衛門を名乗りました。40歳で弟に家督を譲り隠居の身になり、作画三昧の日々を過ごしました。
若冲は初め狩野派の絵師に習い、後に中国古典絵画の模写に没頭しましたが、実物写生にこだわるようになり、自邸の庭に鶏を数十羽飼い、その形状を細かく観察し写生することを数年間行っていたと伝えられます。
後に「鶏の画家」と評判を呼ぶようになりました。
「雪中雄鶏図(せっちゅうゆうけいず)」は「景和」の署名などから桝屋の家督を譲る前の、若冲と号する以前の最初期の作品と考えられます。

雪景色の中で餌をついばんでいる雄鶏。 鶏は儒教では五徳を備えた人格者のたとえとして用いられます。

― 頭に冠を戴くは文なり。足に距(けづめ)を持つは武なり。敵前に敢(あ)えて闘うは勇なり。
食を見て相呼ぶは仁なり。夜を守って時を失わぬは信なり ― 『韓詩外伝』より

(鶏は頭に官僚が被るような冠をかぶっているから頭がよい 足に蹴爪を持っているから武力に優れる
敵前でも果敢に闘うから勇気がある 食べ物を見つけると鳴いて仲間に知らせて分かち合うから思いやりがある
夜を守り正しく時間を告げるから信頼できる)

また雄鶏を囲む竹と菊は、理想の君子(気品のある立派な人物)の姿を表す「四君子」(梅・竹・蘭・菊)のひとつです。
竹はまっすぐで節は固く強く、風雪にも屈せず、常に緑を保つ姿から、菊は秋に咲き、霜や雪の中でも瑞々しい香りを放ち美しく咲き誇る姿から、それぞれ高潔な人格の象徴であるとされています。
この作品の中では、本来まっすぐのはずの竹は節からポキポキと折れ曲がりジグザグに絡み合いながら上に伸びています。現実とは違う竹の姿が若冲独自の不思議な世界観を作り上げています。

この柄のもととなった「雪中雄鶏図」は京都の細見美術館の所蔵品です。
細見美術館様の協力を得て今回友禅染で復刻しました。
ぽってりとした雪の表現や雄鶏の緻密さなど のちの大作「動植綵絵(どうしょくさいえ)」につながる作品です。