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流水にうちわ

流水にうちわ

流水にうちわ

うちわは、奈良時代に中国から伝わりました。中国においては、団扇は八仙人の一人、漢鐘離(かんしょうり)の持ち物とされ、死者の霊魂を復活させる神通力があるとされていました。また、団扇は支配者の権威を象徴する儀礼用の小道具に使われていたといいます。
日本においても、うちわが伝来した当初は権力者が儀礼の際に用いたようです。うちわは、「打破(うちは)」とも呼ばれ、魔を破り邪気や悪霊を払うものとされ、宮中の儀礼用や装飾用に盛んにもちいられました。その後、平安末期に日本で扇が作られるようになり、庶民にもうちわの使用が認められるようになります。文様として使われ始めるのは遅く、着物の文様として人気が出たのは江戸時代以降のことです。季節柄、夏の着物に多く使われています。

ここに描かれているうちわは「京うちわ」と呼ばれるもので、地紙面にそれとは別に作られた把手を差し込む「差し柄」という構造が取られるのが特徴的です。江戸時代に宮廷御用として名を馳せた、土佐派や狩野派の絵師たちが絵を描いた「御所うちわ」が始まりと言われています。それ以来、把手部分を黒塗りにしたり、蒔絵を施こしたりする豪華なうちわが現れるようになりました。この柄に描かれるうちわも把手の部分が雪輪の形になっており、趣向をこらしたつくりとなっています。元禄時代の贅沢好みの風潮の中で、うちわの装飾性が高まり、現在の京うちわへと続いていきます。

うちわ文では「うちわ」の中に様々な文様を描くことが多く、この柄の「うちわ」にも様々なモチーフが描かれています。夏の風情を演出する金魚の柄。夏の訪れと共に来て秋が深まるとともに生を終える蜻蛉。秋草文の一種である撫子は、春から夏にかけての長い間、可憐な花を咲かせることから「常夏」とも呼ばれました。どれも夏の着物に多く用いられる文様です。
更にうちわは、観世水を下敷きに描かれており、さながら流水に浮かべられているかのようです。観世水は、水の流れを表現した文様の一種で、流水の一部に渦巻きを加えたものです。能楽の観世家の定式文であったため「観世水」と呼ばれている、格調ある水文様です。
流水に浮かべたうちわをイメージして描いたと思われるこの柄は、それぞれのうちわに夏を思わせるモチーフを加えて夏の風情を醸し出すと同時に、観世水の流れが涼のイメージを与えてくれています。京の夏の趣きを感じさせる涼やかな柄です。

 

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