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龍

古代より龍は世界各地に様々な形で存在していましたが、日本の龍は、中国から伝えられたものです。
中国において龍は変幻自在(へんげんじざい)の想像上の霊獣(れいじゅう)で、四霊(麒麟きりん、鳳凰ほうおう、亀、龍)のひとつとして、あるいは皇帝始祖として、存在しました。龍には階級があり、水中に棲む蛇状の飛翔できない下級の龍から、翼を持ち飛べるもの、やがて天界に属して翼なしで飛翔するものなどがあります。特に完成された「龍」は漢の高祖以来、歴代皇帝の象徴として宮殿、玉座、衣服、その他美術品などに描かれ、帝王を象徴するものとされました。
そして単なる畏怖(いふ)の対象としてだけでなく、大地と水を支配し、雲に乗って空中を飛翔し収穫や悪疫の除災を司るなどの瑞兆(ずいちょう)としても扱われるようになりました。

日本には4〜5世紀頃、神の使いとして中国から伝来したと言われています。
雨をあやつり大地を潤す、豊穰のシンボルとしての蛇(おろち)信仰の地盤があった日本では比較的抵抗なく受け入れられ、龍とそれとがまじりあい独自の姿になっていきます。
伝説や民話でも、龍や大蛇をモチーフとした類似の話は多く「八岐大蛇(やまたのおろち)」「松浦の小用姫(まつらのさよひめ)」などはその代表的なお話です。

春分には天に昇り雨を降らせ、秋分には降って淵に入ると言われる龍は雲雨を自在に操る水神として崇められ農耕と深く結びついていきます。
やがて四神[白虎(びゃっこ)、朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)、青龍(せいりゅう)]となり、都の守護神として定着しました。
その後、時代を経るに従い神道だけではなく仏教の宗教想とも融合し独自の神格化を遂げてきました。
また、日本の龍は画家や工人達の匠の心を捉えて離さない、最高の題材としてゆるぎない地位を築いてもきました。