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乱菊
乱菊

菊は日本人に最も馴染み深い模様です。
菊が最も一般的に親しまれ、着物や帯の柄として使われたのは明治時代です。日本では古来皇室の象徴として菊紋が用いられたこともあり、菊柄の織物も多く作られていました。ヨーロッパでは1890年代、菊が大流行し、万国博覧会で日本の菊がグランプリを取るなどして菊ブームが起きたのです。その頃のヨーロッパではジャポニズムを背景に菊の模様が洋服の柄にも人気があり、大胆な菊を流れるように使った図柄はヨーロッパのアール・ヌーボーの時代の図柄に見られます。
友禅に、動きのある大胆な乱菊だけの模様が描かれたのは大正の終わりから昭和の初めにかけての斬新な傾向の着物の柄としてでした。
第二次大戦後には大きな菊を白黒赤などの大胆な色使いで表したモダンなデザインで描かれました。シンプルでゴージャスといった、アメリカ人が好むようなジャパニーズモダンが流行したのです。
東洋的なイメージから1890年代に流行したヨーロッパのアール・ヌーボーの流れを汲みつつ、戦後日本で流行した、動きのある菊だけの大胆な構図のこの柄は当時のキリッとした着こなしを好む新しい時代の女性をイメージする柄であり、常に今を生きる女性達の感性に大きく響くのです。
菊は古来、園芸愛好家にも愛され、重陽の節句(ちょうようのせっく)や菊人形などで親しみがあり、自然に日本人の心に根付いた花なのかもしれません。