丸紋や鞠などの丸いものを散らし、円満さ、めでたさを表す柄の表現は古くから親しまれてきたものです。この柄では、花びらを幾重にも重ねた立体感のある大きな丸菊が、夜空に浮かぶ花火のようにも見える大胆さで描かれています。花びらが重なり、盛り上がった球状の菊の形は、洋菊の「ピンポン菊」にも似た形をしています。
和の文様の世界では、大きな円は『丸』と呼ばれ、宇宙を凝縮した形と捉えられてきました。古代より太陽や月の象徴文として、信仰的な意味合いからも広く用いられました。平安時代以降は、『丸』のスケールの大きさや荘厳さといったものよりも、優雅で親しみ深いものとして染織文様に使われるようになり、様々な動植物をモチーフにした丸文が生まれました。
江戸時代の「友禅ひいながた」(友禅模様集)には丸文様が多数みられ、流行の様子がうかがえます。菊は、自然の形そのものが円形になっており、この柄では大胆な丸文として用いられています。
「円満さ」「めでたさ」を大きく立体感ある丸い菊で表現しています。洋菊の形をとり入れ、大胆にデフォルメすることで、古くから用いられてきた菊をよりモダンに描きました。
菊のもつ「延命長寿」のご利益は、丸と組み合わせられることにより、その吉祥の力をさらに強力にしています。