亀田富染工場が昭和の時代に染めていた膨大な着物の図案の中から復刻したものです。
背景が区切ってあるかのように見えるのがこの柄の特徴です。
このようにパッチワークのような文様構成を「裂取(きれどり)」といいます。名物裂・時代裂・古代裂といったように、「裂」とは主に昔の織物の断片のことを指します。
その美しさや希少性から名家や社寺が貴重品として所蔵していました。
江戸時代の大火で豪華な小袖を焼失した際、急場しのぎとして所蔵の裂地をさまざまな形に切り取り、無地の小袖に縫い合わせて仕立てたことから裂取と称されたといわれています。
この柄ははっきりとパッチワークのように背景が分断されている箇所もありつつ、ぼかしの技法でやわらかな印象も加え、きりりとした雰囲気と女性の着物柄らしい優しい雰囲気をうまく融合させています。
さらに小振りに描かれた四季折々の花々が華やかさと可憐さを、共に描かれている几帳や御所車からは雅やかな王朝文化への憧れを感じさせます。
他にも背景の中に籠目柄や麻の葉柄といった厄除けの柄が隠れており、水辺に遊ぶ可愛らしい鴛鴦(おしどり)には「おしどり夫婦」というように夫婦和合の願いが込められているなど、様々な吉祥模様が描かれています。