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金魚玉図
金魚玉図

優雅に泳ぐ金魚を、まるでにらめっこをしているかのような斬新な構図でユーモアたっぷりに描いたこの柄は、細見美術館(京都市左京区)所蔵の掛け軸を基にアレンジを加えました。
明治・大正・昭和にかけて京都で活躍した絵師・図案家の神坂雪佳の代表作である「金魚玉図」を細見美術館の許可を得て、友禅染めで表現しました。

細見美術館 蔵 神坂雪佳「金魚玉図」

細見美術館蔵
神坂雪佳「金魚玉図」

神坂雪佳は京都に生まれ、四条派に絵画を学び、やがて工芸図案の世界で活躍しました。欧州視察をきっかけに装飾芸術の重要性を認識して琳派に惚れこみ、尾形光琳の再来と呼ばれる作風を確立、京都の工芸の世界では“雪佳はん”と呼ばれ、親しまれました。
琳派の「琳」は尾形光琳からきているように、光琳は琳派を代表する絵師です。その再来と呼ばれた雪佳は琳派のエッセンスである大胆なデフォルメや構図、たらしこみ(絵の具のにじみを利用した技法)などを駆使した作品を多く残しました。2001年エルメスの雑誌の表紙に雪佳の絵が採用され海外で高い評価を得たことで、日本でもますます評価されています。
今ではあまり見られなくなりましたが、透明なガラス玉に金魚を泳がせて軒先に吊るしたものを「金魚玉」と呼びました。蒸し暑い夏、軒先に吊るした金魚玉と釣りしのぶ(シュロ皮を丸めて固めたものにしのぶ草を這わせ、紐で吊るしたもの)は空中に浮遊する小さなオアシスのようで、風鈴の涼やかな音色と合わせて夏の風物詩となっていました。しのぶ草の淡いみどりと金魚の赤が風流の極みだったことでしょう。
金魚は中国から室町時代頃に日本に伝わり、江戸時代には広く庶民にまで愛される存在となりました。また、中国では金魚は「八宝(吉祥の意味を持つ八つの宝)」のひとつとなっています。発音が、金があり余ることを意味する「金余」に通じるとして金運上昇の祈りが込められています。
世界に誇る美・琳派をぜひ身にまとってください。

琳派は、本阿弥光悦、俵屋宗達を始まりとし、尾形光琳、酒井抱一に代表される一派です。桃山時代末期に京都の裕福な町衆の経済力と進取の気風を土壌に誕生し、絵画の世界だけに留まらず、衣装、漆芸、陶芸、屏風、扇子など生活に密着した工芸の世界にも波及しました。琳派と呼ばれる絵師たちには基本的に血縁関係などの強い結びつきはなく、生まれた時代も隔たっています。先人の作風に尊敬の念を抱き、時代を超えて受け継いでできたアーティストの系譜といえます。