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菊に常盤木
菊に常盤木

菊は日本の秋を象徴する花です。
日本には奈良時代に薬用として伝わったと言われています。中国の奥深い渓谷に住む菊慈童(きくじどう)が菊の葉にしたたり落ちる朝露を含んだ水を飲み七百歳まで童子のまま生き長らえたという「菊慈童」の故事にあるように、不老不死の象徴です。平安時代には重陽の節会(ちょうようのせちえ)に詩歌を詠い、菊酒を飲み長寿を願う習わしが貴族のあいだで盛んに行われたり、鑑賞用に栽培されたりしました。
「常盤木(ときわぎ)」とは、松の別名です。松は千年の寿命があり、厳寒の冬でも葉の色が変わらない事から「常磐木」と呼ばれ縁起のよい木とされました。現在も様々な松文様がおめでたい植物文様として婚礼衣装の打ち掛けや帯などに使われています。

この柄に描かれている菊は、細長い花びらが上に向かって開くように描かれています。この花姿は、江戸菊や肥後菊と並んで日本三大名菊の一つと言われる「嵯峨菊」の姿によく似ています。「嵯峨菊」は京都・嵯峨で育成された鑑賞菊の一種です。普通の菊より遅く11月頃に咲き、糸のように細い管弁が特徴です。嵯峨天皇の時代に大沢池に自生していた菊を摘み、いけたのが始まりと言われる「嵯峨菊」。約2mの高さになるように仕立て上げられる「嵯峨菊」ですが、これは御殿の上から見たときにちょうど美しく見えるようした為といわれています。今でも大覚寺では11月の一カ月間「嵯峨菊展」が開催され王朝風の伝統を伝えています。

シンプルなタッチで描かれた菊と松。常盤(ときわ)の松に長寿の菊の取り合わせで、「永遠」や「不老長寿」の意味がこめられた柄です。