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貝桶と花車
貝桶

この「貝桶と花車」は明治10年代後半頃に染められ、着用されていた柄です。その頃、友禅染めは化学染料が海外から入ってきた事、型を使用して染める型友禅が考案された事などで隆盛を極めていました。
また、明治時代は、新時代の着物柄を求めて、日本画家の精密な写生風調の図案を取り入れた事や、この柄に使用されている「赤」と「紫」の色が鮮やかに染められるようになった事も、この頃の大きな特徴です。その柄を再現致しました。

「貝合わせ」(本来は「貝覆(かいおおいい)」と言います。)は平安時代に始まった「物合(ものあわせ)」の一つで、平安貴族の遊びでした。二枚貝を二つにわけ、一方を持ってもう一方を探し当てるという、トランプの「神経衰弱(しんけいすいじゃく)」のような遊びです。
その貝を入れる道具が貝桶なのです。王朝文化の発展と共にこの遊び道具も豪華になり、貝の内側に蒔絵(まきえ)技法で「源氏物語」や「伊勢物語」を題材にした美しい絵が描かれていたり、和歌の上の句と下の句が書かれていたりしていました。それらが一対になっているのです。
二枚貝は対になっている貝はピッタリあうが、別の貝とは絶対にあわない事から、夫婦和合という意味合いを持たせるようになり、桃山時代〜江戸時代には大名家の姫たちの婚礼調度品として欠かせない物となりました。
貝桶にも蒔絵や美しい絵が描かれており、裕福な家の婦女しか持つ事の出来ない高級品でした。
庶民はそれを持つ事が出来ませんでしたので着物の柄に描き、婚礼の衣裳として身につけたり、婚礼布団に貝桶の柄を描いたりしていたのです。
この柄は美しい花車と貝桶を組み合わせた古典的な柄です。