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市松に水模様
市松に水模様

水は人の命と生活に欠かす事のでいない大切な存在であり、農耕とも深くかかわり古くから文様に描かれてきました。単独で表す流水、波、渦巻き、水玉、観世水、また他と組み合わせて流水に片輪車で王朝の雅な風物を、菊と水で延命長寿の霊水を、流水に紅葉を浮かべて竜田川、などなど、水を描いた文様をあげれば枚挙に暇がありません。絶える事なく打ち寄せる波や、留とどまる事なく流れる水は永遠に繋り広がるイメージから延命長寿や子孫繁栄を表す吉祥のモチーフとして尊ばれてきました。
また何よりも水は涼を呼ぶ夏の衣裳文様として時代を超えて愛されてきました。
そんな親しみ深い流水文様を昭和初期のモダニズムの時代に、当時新流行のスタイルを図案に取り入れて造ったのがこの柄です。モチーフは伝統的な市松と水を扱いながら、黒と白の大きく大胆な市松模様や力強い筆跡を残した赤と青の水に当時流行の新しさが見られます。強い原色の色彩遣いと、奔放な筆致(ひっち)は世紀末から20世紀初頭にフランスで沸き起こったフォービズム(野獣派)や表現主義の絵画スタイルに通じるところがあります。

市松文様は幾何学模様の典型で、世界各国に見る事ができるデザインです。異なる2色の方形を交互に配した模様で日本では石畳文(いしだたみもん)と言っていますが、江戸時代、佐野川市松(さのがわいちまつ)という歌舞伎役者が石畳文を好んで用い、その舞台姿が評判となり「市松模様」と呼ばれるようになりました。
大正から昭和の時代は、明治時代にはまだ上流階級のものであった衣服の流行が一般大衆のものとなり、大胆な色彩と文様が多くの人々に楽しまれた時代です。しかし、フォーブ調のように奔放な筆遣いや大胆な色遣いの流行は一見自由で平和な印象を与えますが、このようなデザインが流行るのには、実は世紀末の欧州と同様にじわじわと戦争体制に向かっていく昭和のデカタンス(頽廃たいはい的な)社会背景があったことも見のがせません。