大正時代の嫁入り道具の一つである夜具の柄です。
鶴亀松竹梅とおめでた尽しの柄です。当時は藍染めの布団だったようです。
蓬莱(ほうらい)の図柄で、古代中国の神仙思想(しんせんしそう)の別天地が日本化されたものです。東の海にある島で、不老不死の仙人が住んでいるとされています。
蓬莱は天上と地上を結ぶ場所で天上から鳳凰に乗って神仙が降りてくると言われています。天上と蓬莱を行き来できるのは鳳凰と龍です。その空想上の生き物が日本では鳳凰が鶴になり、龍が亀の身近な生き物にかたどられたと言われています。
蓬莱には松・竹・梅の吉祥樹が茂り、四季の花々が咲き、蝶が舞う常春で、空には鶴が舞い、海には亀が遊ぶという理想郷です。蓬莱は蓬莱山とも蓬莱島とも言われます。
「松喰い鶴(まつくいつる)」という柄がありますがこれはまさに蓬莱から松をくわえて飛んできた鶴なのです。
嶋台(しまだい)という台に蓬莱山の神山をかたどった山形の物を作り、これに松竹梅鶴亀、更には高砂の翁、媼を飾りを婚礼などの祝い事に現在でも使われています。
花嫁道具の一つだったこの柄には、婚家が我娘にとって蓬莱でありますようにと、願う親心が込められているというのは考えすぎでしょうか?