この柄は大正時代から昭和初期のもので、男性の羽裏(はうら)に使われていました。
狂言を題材にした柄で、穏やかなおかめが嫉妬(しっと)に狂うと般若(はんにゃ)に変わる女性の二面性、豹変(ひょうへん)ぶりを描いたものです。般若は女性の嫉妬や怒りをあらわしているのです。
この柄の着物を着て、当時の男性は女性のもとに通っていたのです。般若になるほど嫉妬されたいという願望があったのでしょうか?般若にならないでと女性にお願いしていたのでしょうか?当時の人は洒落気(しゃれっけ)があったのですね。
この柄のベースになっている部分は中国の特殊な装飾紙で鑞箋(ろうせん)と呼ばれる高級紙を模した柄を友禅染めで表現しております。鑞箋とは書の特殊高級紙日本には平安時代に持ち込まれたもので、現在でも書の世界では使用されています。