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御所車
御所車

平安時代から鎌倉時代にかけて貴族達が宮中の儀式の時に用いた牛車を御所車といいます。御所車の美しい形が王朝模様の代表的な柄となっています。四季の草花に御所車を配し、雅やかで豪華な風情を表した図柄となっています。

日本は四季折々の美しい自然に恵まれ、多くの草花や樹木が季節毎に豊かな彩りを見せてくれます。古代の人は美しく色付いた花や、青々とした草木の緑を衣服に擦(す)りつけることにより自然の恵みを身につけてその大いなる力で自らを守ろうとしたと言います。そうした事から、我が国では植物の色素を取り出して染色する技術が発展し、特に貴族が住んだ京都では豊富で良質な水にも恵まれて美しい絹の染め物が作りだされてきたのです。

平安時代の日本は古代中国の「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)」の影響を強く受けており、この柄もその思想の典型的な色が使われております。「陰陽五行説」とは『万物は陰と陽の二つの気からなり、「木火土金水」の五つの元素(五行)のはたらきにより生じる』という世界観です。方位や季節等すべての事柄が五つに分類され、五行を色彩で代表させると「青・赤・黄・白・黒」となり、これを正色(しょうじき)といい、正色から生じる「紫・紅・縹はなだ(青色)・緑・茶」を間色(かんじき)といいました。日本では間色を正色の副の色と位置付け、正色を代替(だいがえ)する色として用いてきました。

この御所車の柄では間色(かんじき)の「紫・紅・縹(はなだ)・緑・茶」を中心に正色の「黄・白・黒」を加えて典型的な伝統の五色で彩られています。五色を備えて衣服等を飾る行為は便宜的に色彩で五行の働きを示す事になり、それはとりもなおさず四季のめぐりが順当であり、五方の守りを固めて、世界が泰平のうちに円満に運ぶようにとの願いが込められているのです。ですからこの柄は、四季の花々を飾った御所車の雅やかな様子といい、五色揃った彩色といい、たいへんおめでたい意味が込められているのです。