自然の景色を文様に描く事は古くから行われており、奈良時代は中国の水墨山水画(すいぼくさんすいが)的なものが多く、平安中期以降のデザインの和様化によって次第に日本調の風景画に変わっていったのです。
鎌倉・室町時代には和歌や物語の主題を文様の中に取り込んだ歌絵となり、歌と文字がとけあうような文様が生まれました。江戸時代になってからは風景画が文芸的な意味内容を表す物も多く、着物の柄をみれば何の物語が描かれているかがわかり、上流人の教養を表す文様でもあったのです。江戸中期以後、友禅染めの技法が完成したのと、折からの旅行ブームとが相まって名所旧跡の風景が描かれる事が多くなり近江八景、京名所、竜田川などが好んで描かれるようになりました。
この風景画は昭和40年代に描かれた物で、常盤(ときわ)の木々と季節の花が配置され水の流れも清々しく、山を借景にした美しい庭園をながめているような気持ちにさせてくれます。