昔の人は、青虫から美しく姿を変える蝶に呪術性(じゅじゅつせい)を感たり、羽化登仙(うかとうせん)、すなわちやがて羽を得て天上に昇るといわれ天と地を自在に行き来する生き物と思われておりました。謡曲の中では蝶は魂(たましい)を運ぶ生き物と言われ、この世とあの世を行き来する物として扱われています。
また不死不滅のシンボルとして戦場に赴く武士達に好まれ、蝶を紋章にした武士もあったほどです。
中国では「蝶」を「Dié」と発音し、80才を意味する「耋」の発音と同じ事から長寿を意味する吉祥柄とされています。現代では可憐で美しい姿の蝶を着物や帯の柄として多く用いられ、特に子供用の意匠によくみられます。
この柄には常盤(ときわ)の松・竹は天を表し、桜・萩は変わっていく地を表してその間を蝶が自在に行き来している様を描いているように思われます。桜吹雪の中、可憐に舞い飛ぶ蝶が印象的な柄です。