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武具の図

武具の図

武具の図

この柄は大正時代の男性の襦袢(じゅばん)だったもので、勇ましい大鎧(おおよろい)のパーツを意匠として描いた柄です。
軍備を天職とした武士たちにとって、甲冑(かっちゅう)などの武具は防禦具(ぼうぎょぐ)であると同時に、晴れの舞台で身を飾り威容(いよう)を示す為の盛装でもありました。
日本独自の代表的な甲冑には、平安時代から鎌倉時代に用いられた騎上で弓矢を射て戦う一騎討ちに適した大鎧と中世から近世にかけて作られた地上戦に適した活動的な当世具足(とうせいぐそく)があります。
徳川家康が天下を取り太平の世となった江戸時代には、戦うための甲冑は必要としませんでしたが、権力の頂点に立った武士の権威を誇示し、いざと言う場合の勇ましい心構えを忘れぬ拠り所(よりどころ)として甲冑は大切にされたのです。
武家では正月や節句に、床の間に武具一式の具足(ぐそく)飾りをして武士精神を胸に刻みました。その名残は端午の節句の飾り物である五月人形などとして現代にも伝承されています。
武具は金工(きんこう)、組紐(くみひも)、染韋(そめかわ)などの諸工芸の職人技の結晶で、実用美と装飾美を備えた総合工芸品として高く評価されています。

こうした精巧な職人技への憧憬(しょうけい)と武具の意匠に込められた強さや勝利の縁起担(えんぎかつぎ)があいまって、武具の柄は明治から大正時代の男性向けの襦袢や肩裏(かたうら)の模様として喜ばれました。

この染め物では、軍備を指揮したり馬を御し操(ぎょしあやつる)のに用いる鞭(むち)や予備の弓弦(ゆみつるを)巻き付けるために蔓性の植物の皮を輪貫形(わぬきがた)に編んで作った弦巻(つるまき)が描かれています。兜(かぶと)の正面にツノのように立っているのが鍬形(くわがた)で、この柄には兜は描かれておらず鍬形のみが描かれています。また喉元の防具である喉輪(のどわ)、大鎧の胸の左右に配した付け物の栴丹板(せんだんいた)、鳩尾板(きゅうびいた)なども見られます。ここに見る栴丹板の部分には菖蒲(尚武しょうぶ)や花勝見(はなかつみ)(勝ちを見る)の柄を鹿革に型染めした染韋(そめかわ)が用いられ「勝つ」の縁起を担いだ吉祥文様となっています。

鎧の染韋には古来、怨敵や悪魔を降伏させる不動明王や百獣の王である唐獅子などの強いものが好んで図柄にされ、鎧の小札(こざね)を編み上げている威(おどし)の組紐にも搗色(かちいろ(勝色)と称する紺色や辟邪の赤色などを用いて縁起を担ぎ、神仏の加護を頼んだのです。

 

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