昭和前後の高度成長期の、人々が富貴に夢を抱いた頃の柄です。若い女性が改まった席で着るのにふさわしい、華やかな着物です。
花王(かおう)の牡丹のもとに百花が咲き競い、この世の天下泰平を寿(ことほぐ)という富貴と平和を表す、百花図(ひゃっかず)の流れをくむ豪華絢爛(ごうかけんらん)な模様となっています。
古典的な吉祥花を取り揃え、毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)の模様が花篭にも見立てられ、まるで豪華な生け花を見るようです。
牡丹は姿の絢爛豪華(けんらんごうか)さから「百花の王」と言われ富貴な花の代表格です。
また富みと地位を獲得できるという意味もあります。日本で牡丹は枕草子の中にもあらわれており、平安貴族たちが鑑賞していた事もわかります。
菊は、中国で菊の葉にある露を飲み数百歳まで童のまま生き延びたと言われる「菊慈童(きくじどう)」の古事にあるように、不老不死の霊草として用いられていたようです。それが奈良時代に日本へ伝わり、平安時代には9月9日は重陽(ちょうよう)の節会が宮中で行われ歌を詠み、菊酒を飲み息災を祈ることが定着してきました。
梅は寒中、百花に先駆けて咲き芳香を放つことや、その可憐な花姿から吉祥の花とされ、万葉の時代に大いに愛された花です。万葉集の中には梅を詠んだ歌が多数あり、先人達がいかに梅を愛でていたかが伺われます。
毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)は亀甲(亀の甲羅の形)を三つ組み合わせた形を基本形とした連続模様です。毘沙門天が着用していた甲冑の文様が亀甲形であったため、この名がついたといわれています。