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荒磯丸文
荒磯丸文

「荒磯」は「ありそ」「あらいそ」などと読みます。鯉らしい魚が、波の上に二方向等間隔で跳ねている「荒磯緞子」に由来し、波に跳ねる鯉の文様を荒磯文と称するようになりました。
荒磯緞子は、室町時代に中国から渡来した名物裂の一つで、「荒磯」という名は、日本での呼び名です。荒磯とは、荒波の打ち寄せる磯のことですが、日本で、鯉の跳ね上がった姿から荒波を連想して、そこから「荒磯」と呼んだのではないか、と考えられます。

荒磯の文様が人々から歓迎されたのは、そのモチーフとなる鯉が吉祥の魚、出世魚とされてきたことによると考えられます。中国には「後漢書」に黄河の上流に龍門という滝があり、多くの魚が挑戦したが越えられず、鯉だけが勇猛果敢に立ち向かって滝を越え、龍に化身したという説話があります。ここから人間の栄達を表す「登竜門」という言葉が生まれました。日本でも中国の影響から鯉は出世魚と呼び、鯉の滝登りは吉祥文様とされています。江戸時代には、端午の節句に男児の出世を願って鯉のぼりが流され、ここから鯉のぼりの風習が生まれました。

この柄では、丸文にアレンジされた荒磯文様が花丸文と共に波の間に配置されています。荒磯本来の荒々しい勇壮なイメージに花丸文を組み合わせることで柔らかさを加え、強さと優しさの両方を兼ね備えた柄となっています。
逆境や困難に立ち向かう勇敢さや強い信念をイメージさせる鯉と優しさを感じさせる花が、未来へ向かってがんばる私たちに励ましを与えてくれています。