波の上を走る兎の姿は鰐(サメ)の背を飛び越えて海を渡った古事記の「因幡の白兎」の神話を想起させますが、原典となったのは謡曲『竹生島』ではないかとされています。
「月海上に浮かんでは 兎も波を走るか」
月が湖上に浮かび水面が光ると月に住む兎も波を走っているかのように見える
ゆらゆらと揺れ動く水面に映る月の光を波の上を走る兎に見立て、描かれていなくとも「月」の輝くさまが自然と浮かぶ柄です。
また古くから民俗信仰において兎が豊穣を司る<山の神>とみなされており、月は時間を読み、天候を占い、また収穫の良否を問う<月読神>として神格化され、兎と月、あわせてより強い豊穣への願いとなっています。そのうえ波の持つ永続性を加えたこの文様はいつまでも豊かな生活が続くようにわたしたちを守ってくれることでしょう。
さらにぴょんぴょんと跳躍する姿から飛躍を意味し、前にのみ進むことから前進、古代中国では月に棲み不老不死の霊薬を作るされていたことから不老不死とさまざまな吉祥の意味をもっています。この柄を身にまとうことで、みなさまが波に乗って前に大きく飛躍しますように。