fbpx
三番叟
三番叟

「三番叟」は、天下泰平、五穀豊穣を寿ぐ儀式曲で、お正月や上棟式、舞台開きなどの場で演じられています。
そのルーツは、能が成立する以前の翁猿楽にあるといわれ、今では能の「翁」の中で演じられたり、そこから派生して歌舞伎に取り入れられたりしています。 
三番叟の名前は、その演目の登場人物三人の中で「千載」、「翁」に続き三番目に出て踊ることからきているとされ、この登場人物たちを住吉神社の三人の神様だとする考え方もあるようです。
三番叟の衣装は、背中に大きな鶴が描かれ、その鶴が羽を広げている様が大変ダイナミックな印象を与えています。

鶴は中国で「千年も長生きする白い水鳥」といわれ「瑞鳥・仙鶴」とされています。日本でも、鶴は「気品ある姿」「穏やかな性質」そして「長寿の高貴な鳥」として好まれてきました。鶴の文様は古くから用いられ、着物の柄以外のものにも様々に描かれています。鶴は、その姿かたちの美しさに加え毎年海を渡り飛来する姿が神々しく、古来より信仰の対象ともされてきました。

鶴は、吉祥、瑞祥を表すモチーフであり、亀、松竹梅などとの組み合わせで喜び、品位を表す文様となっています。この三番叟の柄でも、鶴は若松とともに描かれますが、若松は、芽生えて間もない若い松で、新鮮さや将来性をイメージさせるめでたいものとされ、新春を祝う吉祥文様として用いられているものです。お正月などめでたい席で演じられる三番叟の柄として、鶴と若松の組み合わせが用いられたのも、こうしたところから来ているのかも知れません。

着物の柄として様々な形で描かれる鶴ですが、この柄には他のものにない迫力があり、人の目を引き付けます。着た人に、おめでたさに加え、気品とダイナミックさという、一見両極にある魅力をどちらも与えてくれる、三番叟の柄です。