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飛鶴文
飛鶴文

鶴はその白い羽で美しく飛ぶさまと、高貴で誇り高く美しい立ち姿から神の使いの鳥と考えられていました。中国古代思想に影響を受けた日本において鶴は蓬莱(常春で空には鶴が舞い、海には亀が遊ぶという理想郷)に棲み、仙人を運んで天と地を行き来できる特別な鳥で、千年の寿命を持つ瑞鳥とされています。鶴は長寿を象徴する吉祥文として古くから着物をはじめ様々な工芸品の意匠に使われてきました。

中でも、飛翔している様子を文様化したものを飛鶴文と呼びます。鶴は繁殖の求愛期やそれ以外の時期でも、雌雄で、または団体で相互ダンスをしたり跳びはねたり、飛翔したりします。大空を舞い、軽やかに踊る鶴の姿はその晴れやかな美しさや面白さから多様なデザインで描かれたのです。

このように簡潔でモダンな柄行きは、1890年代初頭にヨーロッパを中心に流行したアール・ヌーボーの流れを汲んだ明治から大正にかけての着物によく見られます。当時、日本の浮世絵や工芸品のデザインはヨーロッパの芸術家達に大きな影響を与えました。これまでの写実的な美から、輪郭や曲線模写を基本に、流動的な面を強調した、新しい美が生まれたのです。この柄では鶴を大胆に簡略化し、その躍動感をリズミカルな曲線で表現しています。

鶴のようにいつまでも元気で長生きできますようにと願いが込められた伝統的な意匠をモダンで斬新に描いた柄です。