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百年の鶴
百年の鶴

昭和初期の婚礼衣裳の柄です。二羽の鶴が大きく華やかに描かれ、晴れの日を祝う雰囲気にあふれています。

鶴は蓬莱に住み、この世ならぬ国々から幸運を運んで来ると言われています。日本では古くから神の使いの鳥とされてきました。美しい純白の羽をもち、立ち姿も飛遊する姿も優雅で気品があります。そうした鶴の姿に古来日本人は瑞兆を見たのではないでしょうか。鶴は千年生きるとも言われ、万年生きる亀とともに長寿の象徴とされるなど古くから意匠化されてきました。「鶴の恩返し」の民話などからも分るように日本人にとってとても身近な存在だった鶴は、着物の文様としても様々な形で描かれています。

また、この柄には蓬莱に茂るという吉祥樹「松」と「梅」が描かれています。千年と言われる樹齢をもち、常緑樹で一年を通して緑を保つ松は、延命長寿を表す瑞兆の木であり、吉祥文の筆頭格です。梅は厳冬の中、百花に先駆けて咲き、芳香(ほうこう)を放つ事から忍耐力があり、生命力の象徴と考えられ、めでたい花とされています。
「百年(ももとせ)」という言葉には、多くの年、長い年月、といった意味があります。長い時をかける鶴と松に、生命力の象徴である梅を加えて描かれたこの柄には、幸せが百年の永きにわたって続きますようにとの思いが込められているのです。

2019年、おかげさまで亀田富染工場は創業100年を迎えました。「鶴は千年、亀は万年」と言われるようにこの先の未来にも永く京友禅の染めを伝えていきたい。職人が染める一色一色に思いがこもった「百年(ももとせ)の鶴」です。