亀田富染工場のもつ膨大な数の図案の中から復刻した一柄です。
「千代見草」とは、菊の別称。菊は不老長寿や長寿延命の意味をもつ植物です。「千代」は、千年や非常に長い年月のことを表す言葉で、また千代見草は、「千齢見草」と表記されることもあり、不老長寿の意味をこめて「菊」にその名が付けられたのではないでしょうか。秋を代表する「菊」は和の文化を伝える格調高い文様です。大小の丸い菊の花姿からは、円満さを願う気持ちも感じとることができます。
菊とともに描かれているのは、秋草文として知られる「萩」です。「万葉集」で最も多く詠まれ、万葉の時代から愛された秋を代表する草花です。万葉の時代、すでに庭に萩を植える習慣がありました。遠くへ旅立つ前に形見として萩を植えたことを詠んだ歌も残されています。万葉人は、萩の姿に大切な人との思い出を想い起したのかも知れません。
この柄では、大小の菊の背景に水彩画のようなタッチで萩が描かれ、古典的な菊の文様にモダンさを加えています。永遠、永久といった長い時間への憧れや願い、愛する人との思い出を大切にする心は、万葉の昔から今も変わらず私たちの中に生き続けています。