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花更紗
花更紗

遠い異国の香りを感じさせる更紗の文様は、室町時代から江戸時代にかけてヨーロッパの貿易船を通じてインドから日本に伝わりました。これまで見たことのない色鮮やかな異国の花々や動物の文様が表情豊かに描かれた木綿の染色布は、当時の人々にとって未知との遭遇だったのでしょう、南蛮渡来の高価な舶来品として珍重されました。その貴重さから名物裂同様に、大名をはじめ茶人や裕福な町衆のコレクションの対象として愛好されました。

江戸中期以降には日本でもこれらを模した「和更紗」と呼ばれる国産更紗が日本各地で作られるようになりました。長崎更紗・鍋島更紗・天草更紗・堺更紗・京更紗・江戸更紗などが有名です。これまで限られた裕福な階層に独占されていた憧れの対象であった更紗が、一般にも広く身に着けられるようになったのです。

この図案は亀田富染工場コレクションから復刻した昭和40年代の着尺の柄です。異国を思わせる花が伸びやかに描かれています。植物の意匠は古来より、生命の基本的な流れの源と考えられ、生命力豊かにどこまでも伸びていく様子から延命長寿を寿ぐ吉祥柄です。