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てふてふ
てふてふ

蝶は、その姿形の美しさと、卵が孵ってから蝶になるまでの変化の様子が神秘性を感じさせることから、文様として好まれてきました。

卵から青虫となった後、一度死んだように見えるさなぎになり、その後、命が蘇るように美しい蝶となって舞い上がる。そんな蝶の姿は『不死不滅』のシンボルとして武士に好まれ、その紋章などにもよく用いられています。常に生死の境に立たされていた武士たちは、「蝶」のもつ呪術的な力を自らに取り入れようと考えたのでしょう。武士が用いた蝶の姿には、美しさだけでなく力強さも感じられるようです。

能の演目「胡蝶」は、美しい蝶を主人公にしたものです。吉野の山奥に住む僧が、早春の都を訪ね、古い宮に見事に咲いた色違いの梅を見つけ眺めていました。そこへ胡蝶の精が現れ、自分が姿を現すことのできない早春に咲く梅の花に縁のないことを嘆き『ありがたいお経を読んでもらい、その功徳を受けたい』と語ります。その夜、僧がお経を読んで寝ると、その夢に胡蝶の精が現れ、梅の花とも縁のできた喜びを表して舞い、やがて明け方の空へ消えていきました。蝶が主人公だということもあってか、この物語には、早春の、これから春を迎えるウキウキ感や華やかな雰囲気があります。

この柄で、蝶は線画の形で描かれ、写実というよりはモチーフ的に表現されています。単純化した線のみで表現された蝶は、色によって華やかにも優しくも、また力強くもなり、さまざまな顔を私たちに見せてくれます。
「蝶」の持つイメージの多様性を教えてくれる「てふてふ」の柄です。