江戸後期 武家の女性が着用していたと伝えられる小袖の柄を復刻したものです。
菖蒲・鉄線が咲き誇る中を燕が飛び交うこの柄には、武家らしい思いが込められています。
菖蒲は尚武(しょうぶ)・勝武(しょうぶ)に通じ、武運長久(ぶうんちょうきゅう)を祈ります。
鉄線は正しくは鉄線蓮(てっせんれん)と呼びます。とても堅い蔓(つる)状の茎を持つ事から、一族の堅い結束を意味し、又どこまでも伸びていく蔓にお家の永続性を願ったのかもしれません。
燕は春に南の国から渡ってくる渡り鳥です。毎年同じ場所に巣作りをします。必ず元の家に戻って来る事から、家系を重んじる武家の心に通じます。江戸時代の武家の心情が込められた柄です。
この柄にはベースに縦縞があり、復刻元の小袖は生地を織る時に野蚕糸(やさんし)と家蚕糸(かさんし)を組み合せて織るという工夫がしてあります。この生地を染めると、脂分の多い野蚕糸の部分は染め付きが悪く薄い色に、脂分の少ない家蚕糸の部分は染め付きが良いので濃く染まり、縞模様ができあがるのです。パゴンではこの部分を友禅染めで再現しました。
燕には各地方に色々なことわざが今も残っています。一例をあげれば以下のとおりです。
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燕が低空を飛ぶと雨が降る
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燕が勢い良く飛ぶと晴れる
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燕が上空を飛ぶと風が吹く
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燕が家に巣をかけるとその家に良い事がある
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燕が家に巣をかけなくなるとその家に災難がある
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燕の巣を壊すと災難が降り掛かる
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燕がいなくなるとその家が火事になる、等々
また「雀孝行(すずめこうこう)」という民話が残っていますので紹介しますと…….。
昔 燕と雀は姉妹でした。ある日姉妹の元に親が死にそうだと知らせがきました。雀はなりふりかまわず親の元に飛んでいき、親の死に目に会えました。燕は頬に紅をさし着物を着替えきれいに身じまいをして親の元に飛んで行ったため親の死に目に会えませんでした。それを見ていた神様は親孝行な雀には生涯食べ物に困らないように五穀を食べて暮らせるようにし、燕には生きている虫しか食べられないようにされたのです。