伊藤若冲(1716年~1800年)は、江戸時代中期の京都にて活躍した絵師です。
京錦小路にあった青物問屋「桝屋」の長男として生まれ、23歳で家督を継ぎ、四代目 伊藤源左衛門を名乗りました。40歳で弟に家督を譲り隠居の身になり、作画三昧の日々を過ごしました。
この糸瓜群虫図は桝屋の家督を譲る直前、若冲38、9歳頃の制作とされています。
極端に長細い糸瓜に自由奔放に群がる様々な虫たち。大きな虫食いの跡や葉脈、先端が渦巻き状になった蔓や、昆虫の細部までも丁寧に描き出しているところに、若冲の自然への驚異や愛着が感じられます。
糸瓜と虫たちが同化して見えますが、よく見ると合計で11匹の生き物が描き込まれているのです。糸瓜と虫の取り合わせは中国の草虫画によくあるモチーフですが、若冲はその様式を取り入れながらも独自の視点による表現をとっています。
この絵は博物学に親しみ、自らも虫の写生帖を描いたほどの大名画人、伊勢長島藩主の増山雪斎(1754年~1819年)の愛蔵品でした。富岡鉄斎がこの絵の模写や箱書をしている点も興味深い事です。
現在は京都細見美術館の所蔵品です。細見美術館の協力を得て今回友禅染で復刻しました。
2016年は若冲生誕300年に当たり、「伊藤若冲 生誕300年」をパゴンのテーマとし、「糸瓜群虫図」の見事な描写を、パゴンは友禅染で表現しました。