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格子に梅樹秋草
格子に梅樹秋草

江戸時代中期の夏の小袖(現在の着物の元になった形。それまでのそで口が大きく開いた大袖に対し、小袖はそで口が狭い形)の柄です。
元の小袖は、裾から立ち上がる梅の樹に籬(竹や柴で編んだ垣根)を表す格子を沿わせ、菊や萩の花を絡ませた意匠の帷子です。帷子とは古くは夏の汗取りとして着用したもので、絹や麻で織った布で、白が正式でした。江戸時代には夏の単衣で麻製の小袖をさすようになりました。
この柄は菊と萩の秋草を用いた事で秋の気配を取り込み涼しさを感じさせる趣向になっており、日本人独特の素晴らしい感性には、いつも驚かされます。

梅は中国原産の花木ですが、奈良時代に薬用として渡来しました。百花に魁けて厳寒の中で逆境に耐え香り高く可憐な花を咲かせる梅は日本人にも古くから愛好され「万葉集」にも多く詠まれております。

菊は日本を代表する花の一つで、中国の故事から不老長寿の吉祥文様として愛好されてきました。菊はしばしば籬と組み合わせて描かれるのですが、これは平安時代に籬に結い付ける栽培法が広まったことから、流行した文様です。

萩は日本字で、秋に花が咲く事からこの字が当てられました。野山に自生し「万葉集」には秋の七草の一つとして数多く詠まれています。秋の野に涼やかな風が駆け抜ける情景が思い浮かべられます。