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薬玉
薬玉

邪気を払うために、室内に掛けた薬玉を文様化したものです。古くは平安時代、中国で端午の節句・5月5日に魔除けを祈願する風習が日本へ伝わり、平安貴族間の行事の一つとしてとり行われていました。

薬玉

Wikipediaより
File:薬玉全図.jpg

錦の袋に不浄を払うとされる麝香や沈香・白檀などの香原料を詰めたものを芯とし、菖蒲や蓬の葉で飾り付けて、五色の糸(赤・青・黄・白・黒)を長く垂らして柱や御簾にかけたり身につけたりしました。

旧暦の5月は現代の梅雨にあたり蒸し暑くじめじめとして疫病が流行しやすい時期であった事から、香りが強く薬効のある菖蒲や蓬を用いて邪気(疫病)を払い長寿を祈願したのです。
また、五色の糸は古代中国において森羅万象を形作る五行(木・火・土・金・水)が調和した状態を表すもので、四季が順当にめぐり、世界が泰平で円満に運ぶようにとの願いが込められています。
端午の節句に飾った薬玉は、9月9日の重陽の節句に菊と茱萸(カワハジカミ)の実を入れた袋に掛け替えられ、長寿を祈願しました。

最初は簡素な造りだった薬玉ですが、やがて色とりどりの花や造花なども用いて趣味工夫を凝らした美しいものへと発展してゆきました。
端午の節句に行われていた「観騎射式」(後の流鏑馬の先駆けとなるもの)の際には天皇に献上されたものが諸臣に下賜されるなど、その華やかさからも贈答品として平安貴族の間で重宝されていました。
この行事は江戸時代まで続きましたがそれ以降は庶民の間で女児の玩具として流行しました。やがてその華麗さかさから、邪気を払い長寿を意味する吉祥文様として女性の晴れ着や女児の七五三の着物に多く取り入れられるようになりました。
平安貴族達の華やかな王朝文化を垣間見ることのできる、雅な柄行きです。