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動物更紗
動物更紗

現代では、一般的に異国風な染め文様の布を「更紗」と呼んでいますが、本来は、近世初頭に南蛮貿易によりインドからもたらされた染木綿を指していました。桃山時代から江戸初期にかけては陣羽織の素材としても用いられ、斬新なデザインの陣羽織が製作されました。また茶道の世界でも、道具箱などを包む裂として、珍しい更紗裂は愛好されました。
鮮やかな色調と斬新なデザインに影響されて、日本でも堺、京、鍋島、天草などで更紗を染め、これを和更紗と呼んでいます。
この和更紗では、独特の版木を使う鍋島更紗以外は、次第に紙型を使用するようになり、友禅染めによるものも現れました。
文様の種類には、草花や樹木、鳥獣のほか幾何学文様もあります。この柄で描かれているような動物文は、古代から各民族で描かれてきたものです。もともとは動物崇拝、呪詛祈願、狩猟の記念などに壁面に描くことから始まり、それが次第に装飾のために文様化されていきました。日本では、中国などの影響もあり、様々な動物がモチーフとされています。

この柄には、鳳凰、麒麟といった想像上の動物や、孔雀や鹿、彪、そのほか南国風の鳥たちが様々に描かれています。
鳳凰は、百鳥の王といわれる瑞鳥で天下泰平を表す吉祥文です。麒麟は千年を生き、王者の徳が広く行き渡った時に現れる神聖な瑞獣とされ、立身出世のシンボルでもあります。
また、孔雀は仏様を護る孔雀明王として奉られ、美しい姿、強い生命力、気高さなどを意味しています。鹿は神様の使いと考えられ、中国でも長寿の仙獣として貴ばれています。
動物たちの文様の間には、様々な花が描かれています。花も、やはり吉祥文である牡丹や菊、梅などをモチーフにしているのではないでしょうか。どれも南国調の図柄にアレンジされているようです。

異国情緒あふれる更紗文様ですが、用いられているモチーフは着物の柄らしく吉祥文を基本として、そこに南国のムードを加えるように南国の鳥たちや、南国風にアレンジした花が盛り込まれています。
新鮮さを感じさせる動物更紗の文様ですが、そこには変わらず、身につける柄のもつ力を、自らに取り込もうとする、古来よりの日本の文化が息づいているのです。