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海老
海老

大きな海老が躍動する様が迫力の構図で描かれるこの柄は、東京国立博物館所蔵江戸時代の歌舞伎の衣裳です。
「打掛 黒地海老注連縄若松模様(うちかけくろじえびしめなわわかまつもよう)」の柄を東京国立博物館の許可を得て友禅染めで復刻させたものです。切付(きりつけ)、刺繍(ししゅう)によって描かれた大海老を染めの技術で表現しました。

『海』に『老』で『えび』という当て字は、平安初期より用いられ、鎌倉時代には『海の翁』とも呼ばれて不老長寿の象徴とされました。伊勢海老の腰の曲がった鬚(ひげ)の長い姿は、まさに長生きの老人にそっくりだとされ、そのめでたさから古くより祝い事の飾りに用いられています。また、海老が勢いよく跳ねる様子から出世の象徴とされることもあります。そういった意味からでしょうか、武将がかぶる兜(かぶと)の前立てに海老のモチーフが用いられたこともあったようです。
海老の横には、若松が描かれています。若松は、芽生えて間もない若い松で、年始の飾りに使われます。新鮮さと将来性をイメージさせることから、めでたいものとされており、新春を祝う吉祥の意味をもった文様として用いられるようになりました。
しめ縄は、区域を限ったり、出入りを禁止する為の縄ですが、門戸に張って不浄なものが入らないように、という意味を示したりもします。
この柄には、海老と若松が並んで描かれていることから、生まれて(芽生えて)間もない若年の頃より、海老のように腰の曲がる長寿の時期まで、しめ縄の力で不浄なものから守ってもらえそうです。

海老には、禁中の女官の女房詞(にょうぼうことば)に『かがみ物』という別称があり、正月の鏡もちの飾り物として言い習わされたのか、とも言われています。共に描かれる若松、しめ縄のイメージも相まって、正月のおめでたい雰囲気を伝えています。
年明け一番の新鮮な気持ちを思い出させてくれると共に、災厄からも守ってくれる、二つの意味を持った海老の柄です。

「打掛 黒地海老注連縄若松模様」 東京国立博物館所蔵 
Image :TNM Image Archives Source:http://TnmArchives.jp/
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