桜は日本の国花であり、日本人に最も愛されている花ではないでしょうか。
春爛漫(はるらんまん)を謳歌(おうか)して咲き誇る桜花に野鳥を添えて、伝統的な花鳥画を彷佛(ほうふつ)とさせる柄です。
「花鳥風月」や「雪月花」は日本の豊かな自然が織り成す四季の風情をあらわし、古(いにしえ)より人々は四季折々の風物が映し出す情景に心情を託して歌に詠(うた)い、絵に描いてきました。
自然に依存した古代の生活では四季が順調に移り変わる事は、とりもなおさず五穀豊穣(ごこくほうじょう)と人の世の泰平(たいへい)を意味し、一年を周期に繰り返される生命の営みに感謝と喜びの感情を抱いた事であろうと思われます。四季花鳥画にはそうした自然賛美、現世賛美の気持ちが込められています。
桃山時代の狩野派(かのうは)、江戸時代の円山派(まるやまは)と写生調子の花鳥画が多くの人々を魅了し、友禅染めの意匠に取り入れられるようになり、さらに明治時代には画家が盛んに下絵を描いて、今日の洗練された典型的な友禅花鳥文様となったのです。(明治初期、岸竹堂、今尾景年、幸野媒嶺など多くの画家が友禅染めの下絵を描き絵画調の図案が普及しました。)
この柄は日本美を伝える美しい日本画のような花鳥図柄です。