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蛇の目傘
蛇の目傘

花で飾られた可愛い蛇目傘のこの柄は比較的最近の柄です。
傘についている紐の流れに動きがあり、リズミカルな感じをだしています。柄の有る部分、ない部分、多い部分、少ない部分と強弱をつけた画面構成は、着物柄を見ていつのも感心させられる事の一つです。

頭にかぶる「笠」に対し手に持つものを「傘」「さし傘」と呼んでいます。
傘は貴人を覆い守るもので、傘だけで富貴な意味をあらわしています。聖徳太子やお釈迦様が大きな傘を弟子達に差し掛けられて立っていらっしゃる絵を私達も目にします。傘の中には高貴な方がいらっしゃるのです。

小さな傘は蛇の目傘、番傘といわれ雨を避けるための実用的なものでしたが庶民は持つことができず、それを持てるということはそれだけの資力があるということだったのです。また、花傘は神霊を呼び寄せると思われていました。花傘に悪霊を呼び寄せ傘ごと捨てて、追い払うという行事もあります。
そんな日傘や蛇の目傘が意匠化され着物の柄として使われるようになったのは江戸中期以降のことです。
傘は開いたり閉じたり、その形のおもしろさが着物の意匠として多く用いられるようになりました。

傘は末広がりに通じおめでたいもの、傘を広げ守ってくれる、かばってくれる吉祥の柄とされてきたのです。
狂言の演目に「末広」というのがあります。主人に末広(扇子)を買ってこいと命じられた家来が「末広って何だろう?」と思いながらも、出かけるのです。主人は末広とは「骨があって広がるもの」と教えてくれたのです。
街に出かけた家来は「末広」を探すのですが見つかりません。そこへ商人が破れ傘を売り付けるのです。家来は「骨があって広がるもの」……まさしくこれが末広だと買って帰るというお話です。