元になる柄は、江戸ちりと呼ばれている鬼ちりめんの柄です。
鬼ちりめんは明治時代から大正時代にかけて多く染められたものです。古布愛好家の間ではとても貴重な布で最近は希少価値から大変高価になり手に入りにくくなっております。
この「魚と波」は復刻版としてアロハシャツに蘇らせました。魚と波がリズミカルに意匠化されており、躍動感あふれる図柄です。
この柄はアール・ヌーボー、アールデコのデザインの影響を受けた昭和初期1920年代の柄だと思われます。
幕末から明治にかけて日本の浮世絵がヨーロッパに大量に流出し、かの地の芸術家達に多大な影響を与えました。
明治、大正時代の上流階級の調度品として使用された輸入品にはアール・ヌーボー、アールデコのデザインが多くありました。それらは浮世絵や日本の工芸の影響を受けたヨーロッパの工芸家達がデザインしたものだったのです。いわゆるデザインの逆輸入品でした。
そのデザインが広く日本の一般民衆に認知されてきたのはおそらく大正末期から昭和初期にかけてだと思われます。
この柄にある魚の描き方は幕末から明治にかけての図案本に出て来る魚の表現とよく似ています。
それらを念頭においてこの柄を見るとジャポニズム→西洋のアール・ヌーボー→日本の流行品という流れがわかります。
躍動感溢れる波、流水の線、魚の姿.日本であって日本らしくない図柄です。