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茶碗の最高峰、国宝・曜変天目茶碗をスカーフに(後編)

曜変天目の配色を想像し型作りから携わる

曜変天目茶碗をモチーフにPagongでスカーフを製品化することが決まってから曜変天目茶碗のことを考えてばかりでした。本当に難しく、プレッシャーもありましたね(笑)

型の製作過程では谷口染型工房さんと柄の配置や大きさなど型作りの初期段階から意見交換しながら製作していきました。何度も何度も静嘉堂文庫美術館から提供された曜変天目の画像を眺め、配色のことを考え、型の枚数、順番、色の重なりなど、いかに曜変天目茶碗の魅力を表現できるかどうかを頭の中で想像して考えを巡らせていました。

角度や光の当たり方によって変わる立体作品の色の妙

配色している段階で一度静嘉堂さんに表現したい色の認識が合っているか確認したことがあったんです。するとわたしたちと認識が微妙に違っていました。曜変天目茶碗は見る角度によって色味や雰囲気が大きく異なるんです。それまで参考にしていた画像の色味は、青や紫の斑紋の周りが黄味がかっているように見えたのですが、静嘉堂さんの考えている色味は黄色っぽいところは無かったんです。今まで絵画のような平面を友禅染するときにはあまり起きなかったことだったのでびっくりしましたし勉強にもなりました。立体作品の色の妙、特に曜変天目茶碗ならではと言ってもいいエピソードですよね。

曜変天目とPagongのこれから

思いがけないところで難しさを感じましたが、色の認識が揃ってからは良い配色ができたと自分でも思います。細かい調整を重ね、皆が納得する色で曜変天目を表現することができました。1種類の配色でここまで時間がかかったのは初めてでしたが、静嘉堂さんと協力してひとつのものを作りあげたことはわたしとしても大きな経験になりました。実際にスカーフを手にしていただいた方からは「スカーフ以外の商品も楽しみにしてるね」と嬉しいお言葉をいただけました。わたしたちもスカーフ以外の展開やPagong流の新しい配色をしていきたいという思いもありこれからが楽しみです。より多くの人たちに曜変天目の魅力と友禅染めの良さを伝えたいので、ぜひ皆さんにも楽しみにしていただきたいです。

語:湯浅千津 / Pagong 株式会社亀田富染工場 配色師