Voice & Story - Voice from backyard & FAN -

茶碗の最高峰、国宝・曜変天目茶碗をスカーフに

曜変天目との初めての出会い

曜変天目との出会いは北斎館の館長さんからの突然の連絡でした。静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーが丸の内に新しく移転することになり、静嘉堂さんの注目所蔵品である曜変天目を元に作品を製作してもらえないか、というご相談でした。曜変天目茶碗について詳しく知らなかったのですが、その写真を見てみると「宇宙」のような茶碗だと思ったんです。お話を伺うと世界に三点しかない茶碗で、国宝に指定されている歴史ある所蔵品でした。製作するからには皆さんの期待を裏切れないと思いましたね。それから静嘉堂さんとデータのやり取りをしながら型起こしから始めました。

試行錯誤を繰り返し、お互いの思いを最大限に

絵画ではなく茶碗の柄を友禅染するのは初めての試みでした。絵画のように平面ではなく、湾曲しているのでどのように模様を表現するかすごく悩みましたね。私は製作において曜変天目を平面に引き伸ばし、ヒョウ柄のように捉えました。ヒョウ柄のような繰り返しの柄、リピートされているテキスタイルは生地のどこをハサミで裁断しても使いやすいというのと、模様をそのまま表現するだけではなく、スカーフに落とし込むという最終着地点があったので、日常でもファッションとして身に付けてもらい易い作品にしたいとの思いがありました。もちろん静嘉堂さんも曜変天目茶碗に対する思い入れがあるのでご要望に耳を傾けて、この国宝の持つ世界観を大切にしながら製作を進めました。お互いにとって良いものにするために何パターンもラフスケッチに描いて静嘉堂さんに送り、何度も意見を交換しました。最終的にアロハシャツやスカーフに応用できる斑紋が均等に広がっている図案となり、この国宝の世界観や宇宙観を表現できたと思います。

職人だから表現できる細部へのこだわり

曜変天目茶碗の瑠璃色の斑紋を表現をするために型制作において何度も試行錯誤しました。単色に見えても実は何色も重なって表現されている所や、斑紋の周りは少し黄色味がかって見えている所もあったりと、どこをどこまで表現するのか、何枚の型に分けて表現するのかなど、谷口染型工房さんと相談を繰り返して型を作っていきました。

型が出来上がると社内の配色師が曜変天目茶碗の画像を見ながら色のデータを作っていきます。初めに制作したものは、のっぺりとした深みのない色で「これは違うな」と思いましたね。上手く表現できなかった部分を、どうすれば理想通りの表現ができるか考える必要がありました。例えばすごく小さな青い点と白い点がありますよね。これも実は工夫した一つで、曜変天目の陶器の表面を表現するために取り入れました。実はこの点の量もやり直しながら調整したんです。他には釉薬が熱で燃え溶けたような模様になっているので、燃えているような表現を心がけました。テキスタイルにするので、燃えている方向がそれぞれの斑紋ごとに同じ向きを向いているのではなく、それぞれが無造作に燃えている様に方向はバラバラに敢えてしました。実際は必要のない要素かも知れませんが曜変天目の陶器感を出すためには必要だと思っています。色の選定、制作を何度も繰り返すことでようやく色に濃淡が付き、奥行きも表現できるようになりましたね。

Pagongの新しい挑戦

日本の国宝に指定されている曜変天目茶碗の柄を友禅染めで表現しました。着物柄や絵画を中心に友禅染めをしてきた亀田富染工場にとって今回の曜変天目茶碗の取り組みは新しい挑戦だったと思います。色の表現から陶器の釉薬の模様の表現など、たくさんの工夫が施されたスカーフとなっています。どんなお客様に身に付けて頂けるかとても楽しみです。曜変天目は徳川家が所蔵していたこともあるほどで、天目茶碗の最高峰と言われています。幾人もの陶芸家が再現に試みましたが、作ることがいまだに出来ない何ともミステリアスなお茶碗です。2022年10月1日からは東京の丸の内の歴史ある建物、明治生命館1階で展示予定ですので是非実物をご覧になってください。ミュージアムショップには、今回制作したスカーフも取り扱いされるのでそちらもぜひ。

より多くの人たちに曜変天目の魅力と友禅染めの良さが伝わると嬉しいです。

語: 亀田富博 / Pagong 株式会社亀田富染工場 代表取締役