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鳥獣花木図屏風×Pagong 制作秘話 前編「夢の世界をアロハシャツに」

鳥獣花木図はまるで夢の世界

もともとPagongは着物の図案の美しさと友禅染の染色技術を生かしてアロハシャツをつくってきました。Pagongが誕生して20年が経ち、これまでに200柄以上復刻してきました。日本には素敵な模様やデザインのものがたくさんあります。葛飾北斎の作品もそうですよね。以前、北斎の「怒涛図男浪」を友禅染めで復刻し、アロハシャツを作りましたがたくさんの方に愛していただきました。

他にも興味深い日本古来のデザインが無いかなと探していた時に、とある雑誌に伊藤若冲の「鳥獣花木図」が紹介されていたんです。一目見てとても驚きました。まるで夢の世界のような印象を受けましたし、描かれている動物たちも独特な表情。すぐに心を奪われたんです。この作品は日本絵画のコレクターとして有名なジョー・プライスさんが保有していたものですが、ちょうどその時この絵が出光美術館様所有に変わったタイミングでした。

この鳥獣花木図をPagongのアロハシャツにしたいと思い、ジョー・プライスさんから譲り受けた出光美術館様に訪問。アロハシャツを通して伊藤若冲の素晴らしさ、鳥獣花木図の魅力を伝えていきたいとお伝えして快諾していただきました。突然京都からやってきた見ず知らずの私の話を聞いてもらい、その後も鳥獣花木図の説明をして頂き、関係者の皆様には本当に感謝の念が尽きません。

試行錯誤の連続、そして感動

出光美術館様よりいただいた高解像度の写真を型にしていく作業は緻密な作業です。Pagong創立当初から版・型の製作を依頼している谷口染型工房の谷口さんには「これは大変だけどやりがいのある仕事になるね」と言われたことを覚えています。

京の名工 谷口氏のお話はこちら

出来上がった型は25版。25回染める作業を繰り返すわけです。版が多いということはそれだけ染める難易度が高くなります。最初はやっぱりうまくいかないこともあって試行錯誤の連続。ミリ以下の単位で職人が合わせていくわけです。何より若冲がマス目でこの絵を表現しているので、染めでもマス目をちゃんと表現しないといけないのです。色々な染料で試しましたが結局どれも納得いかず、最後は逆に色を抜こうとなり、抜染の技法を用いるとなんと理想以上の染め上がりになりました。昔から着物を染めていたのでこんなことができるのだなと思いました。業界用語ですがヒメ返しという技法を用いました。
出来上がったときは感動の一言。出来上がったものを見た時にはいろんな人達の顔が思い浮かびました。染職人の小野さん、山田さん、調色の畑井くん。型を作って下さった谷口さん、パゴンのメンバー。出光美術館の方々、いろんな人たちの顔が浮かんできて一言では言い表せない想いがこみ上げてきましたね。私が初めて鳥獣化花木図を見た時に、思い描いたもの、以上の作品が完成しました。

Life with Pagong絵画と対話して、つくる

鳥獣花木図と向き合ったからこそ、このアロハシャツは誕生しました。

作る前に美術館からいただいた高解像度画像をずっと眺めて考えていました。伊藤若冲が何を思っていたのか、それぞれの動物の表情、木々、ひたすら眺めて、対話していたような感覚です。青い背景は海なのか、空なのか。木々の実は林檎なのか、それとも別の果物なのか。そしてやはりこの象の表情や存在感。見れば見るほど惹かれました。インクジェットプリントではなく、丹精込めて作った型を用い、染料を捺染し、抜染し、蒸して発色させる京友禅の技法だからこそ、伊藤若冲の世界観を表現できたと思っています。ぜひ実際に手に取ってこの世界観に浸っていただきたいですね

→伊藤若冲 京友禅アロハシャツ <鳥獣花木図屏風/青>

語: 亀田富博 / Pagong 株式会社亀田富染工場 代表取締役