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鳥獣花木図屏風×Pagong 制作秘話 後編 「丁寧な仕事」

一目見た瞬間、色の多さと緻密な表現に惹き込まれた

「鳥獣花木図」とても興味深い絵画ですよね。一目見た瞬間、色の多さ、緻密な表現に惹き込まれました。

型を作るために、まずはお預かりした写真データをPCに取り込むことからスタートします。実は絵画をそのまま取り込むのではありません。Pagongさんが考案したアロハシャツ用のデザインを作ります。なので実際の絵画には存在するけど、アロハシャツには残念ながら入らない動物もいます。逆に不足している箇所には別のものを書き加えます。今回は花を書き足したりしてアロハシャツ用のデザインを作り上げていきます。

絶対に不自然になってはいけません。鳥獣花木図が持つもともとのタッチを表現します。Pagongさんと打ち合わせを繰り返してPCを用いて図案をトレースしていくわけです。実はPagongさんができた当初は手作業によるトレースもしていました。今ではデジタルによる作業で行い、インクジェットプリンターで型を作成することができるんです。2015年ごろからこの手法が主流になり、デジタルになったことで型の精度が上がりました。そのため鳥獣花木図のような緻密な図案も型にすることができたわけです。昔だったら困難だったかもしれません。

「ぼかし」による絶妙な表現

微妙な色加減を実現するための工夫や技法を凝らして実現しました。絶妙な色味の変化をつけるために、ほんのり淡い色合いのレイヤーを敢えて重ねたりもしています。この技法を「ぼかし」と言うのですが、これにより絶妙なグラデーションを表現するなどしています。

鳥獣花木図のこの図案を実現するために何度も打ち合わせを重ねました。絵画としての魅力をアロハシャツで表現するため、Pagongさんも大変なこだわりをお持ちですから最終版からも微妙な調整を重ねました。果たして本当に良いアロハシャツに仕上がるかどうか心配でしたが満足いく仕上がりになり良かったです。

難しいからこその面白味

難しいからこそ面白味がある。トレースするときは拡大して見るのですが、その際に伊藤若冲の技術が垣間見えて面白い。Pagongさんとは長く一緒に仕事しているので信頼関係もあり、ひとつひとつの仕事が興味深いのですが、鳥獣花木図のシャツを始めて見た時は「さすがうまいこと染められるな」と思いました。人気のあるデザインと聞けて嬉しいです。携われて光栄です。

Life with Pagong丁寧な仕事の積み重ねこそPagongのシャツ

自分が手掛けた図案のアロハシャツを着ている方と街ですれ違うことも多いです。やっぱり嬉しいですね。私は着物や他の洋服のお仕事もしていますがPagongさんのシャツは不思議と目に入ってきます。目を惹くデザインも多いしね。今はこの仕事をする職人は高齢化しています。インクジェットによるプリントシャツがどんどん増えてきて型の注文はどんどん少なくもなってきました。特に着物についてはご存知の通り生産も少なくなっています。昔は振袖であれば、例えば帯だと型の数が50を超えることもありました。

私は「丁寧に仕事をすること」を大切にしています。依頼者様の想いに耳を傾けて作ること。Pagongさんのファンの方にぜひ知っていただきたいことがあるんです。1枚のシャツであってもたくさんの人々が関わっているんですよね。各工程で素晴らしい方々が丁寧に取り組んでいる。丁寧な仕事の積み重ねこそPagongのシャツですよね。

語:谷口尚之 / 京友禅伝統工芸師(谷口染型工房)