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楽しく優美なデザイン、歌舞伎十八番が舞うアロハシャツ

目に飛び込んできた歌舞伎柄

Pagongではこれまで蔵に眠る図案から、型を起こしてアロハシャツを制作してきました。亀田富染工場が昔染めた柄や、他の染め屋さんからもらいうけたものなどがあります。着物の柄をそのまま洋服にしようとすると、裁断の関係上、変なところで柄が切れたり、要尺が無駄にかかったりしてしまいます。また着物の柄は素晴らしいのですが、現代の感覚に合わせて模様の間に空間を作ったり、花や葉っぱを増やしたり、減らしたりしてテキスタイルとしてリズムが出るように工夫しています。

2023年の新柄を考えるにあたり、亀田コレクションを開き、再び6000近い図案集を開きました。その中に何度も型を起こそうと寸前まで行って、途中でボツになっている柄がありました。柄は面白いのだけど、ひしめき合っていて、使いにくいということでボツになっていました。しかし、よくよく見てみると、この柄の中に私が好きな助六がいました。その他にも勧進帳の名場面や歌舞伎の主役級のキャラクターが描かれていました。これはなんとしても助六を復活させたいと!

助六とは歌舞伎十八番で「助六ゆかりの江戸桜」という演目の主役です。家宝である刀を盗まれ、仇を吉原の町で探すイケメンなのですが、彼の男らしさと、ハチマキ姿がなんともカッコイイのです!ちなみに助六が敵対する髭の意休という悪役の衣装も、松竹衣装からお借りしアロハシャツとして復刻しています。髭の意休に対して、なんとか助六をアロハシャツとして復刻したとの思いもありました。(笑) 

原画に大きな変化を加えるという挑戦

いざ、柄を起こすにあたり、そのまま柄がひしめき合った状態のものと、空間を空けた柄のふた通りで進行しました。最後の最後までこの柄が持っている個性であるひしめき感を残すのか、現代のライフスタイルに合わせファッション性を高めて、空間を作るのかでとても悩みました。悩んだ挙句、コロナが流行ってまだまだ終わっておらず密が禁止されていたので、彼らも距離を取って、ソーシャルディスタンスを保とうと、半分冗談混じりで決定しました。

実際のところどちらでも良い柄になったと思いますが、せっかくなのでアレンジを加えて変化を楽しんで、また違う柄をアレンジする際のノウハウになればと思い、アレンジを加えることにしました。制作の裏側はこんな感じです。あとは全てをいつものように伝統工芸師の谷口染型工房の谷口さんに託しました。いつも最高の友禅型を仕上げてくださいます。この柄の面白さは、下手くそなのか上手なのかわからないような、線のタッチで歌舞伎役者たちが描かれているところです。適当に描いたんちゃうか?と思う箇所もあるのですが、そこが固くならずリラックスしてて良いのかな。空間があって派手すぎず抜け感があって、パゴンアロハが初めての方にも、楽しんでいただけるアロハシャツになったと思います。

図案の中に描かれている9演目

「暫」

「矢の根」

「嫐」

「蛇柳」

「七つ面」

「解脱」

「助六」

「鳴神」

「勧進帳」

ルーツ、ストーリー、遊び心を身に纏うことの喜び

作る側にも1柄1柄思い入れがありますが、あとは着て頂いた方がアロハシャツを着て出かけて頂き、いろんな思い出を作って頂けたらと思います。私たちが一生懸命に作ったアロハシャツが何かの役に立てたら、そんなに嬉しいことはありません。

いつも私たちが目指していることですが、10年経っても20年経っても色あせない、流行に左右されないアロハシャツになったと思います。アロハシャツを通して色々な方との出会いが起こることを楽しみにしております。

語:亀田富博 / Pagong 株式会社亀田富染工場 代表取締役